裏路地の中でも一番治安の悪い「23区」に生まれる。
両親は生まれた子供を労働力として店に売り、現金を稼いで生活していた。
アンは女の子だったため買い手がなかなかつかず、最終的に「七福飯店」という中華料理店に買い取られた。
23区の裏路地は、都市の裏路地の中でも一番倫理観に欠けており、中でも23区では「人肉食」が平然とまかり通っている。わざわざ人を食べるために別の巣から金持ちが来るようなこともある。
そんな23区の飲食店「七福飯店」も、例に漏れず人肉中華料理店だった。
物心ついた時には食材加工係として働かされており、まともな教育を受けていない。給料も支給されておらず、食事と寝床が与えられ、生活に必要なものは店から支給されていたため、お金の感覚を養う事ができなかった。
「自分たちで食材を調達する」タイプの店で、「仕入れ」に同行することも多々あった。
店のオーナーはとても厳しく、躾や脅しのため、たびたび「裏路地の夜」の時間帯にアンを外に放り出し、3時10分ごろにようやく店の中に入れてもらえる、という経験を繰り返す。
実際にその方法で何人もの同僚が「処分」されており、「次はあたしかもしれない」という恐怖をずっと持ち続けていた。
あるまだ幼い頃の夜、アンは店の奥に、新しく買い取られた孤児を見つける。親を思って泣く姿を見て自分を重ね、彼の手を引いて店を脱走した。
しかし早朝、裸足で歩く2人を裏路地の住民に発見され、不審に思われ捕まってしまう。
七福の子供だと見抜かれ、店に連れ戻され、「どちらが逃げようと言い出したのか」と問い詰められるアン。処分されることを恐れ、我が身可愛さで「向こうが言い出した」と咄嗟に嘘をついてしまう。
その結果、オーナーはその場で孤児を「処分」し、罰としてアンの右目を抜いた。
その結果がアンにとっての一生物のトラウマとなり、彼の命乞いの悲鳴が今も頭の中で鳴り響いている。
「逃げたり抵抗しても、余計事態が悪くなるだけ」と学習したアンは、学習性無気力を発症し、オーナーの怒りやトラブルを引き起こさないように、静かに従うようになり、次第に罰として外に放り出されるようなことも減っていったが、それと引き換えに感覚が麻痺していく。
彼女が成人した頃、LCBから引き抜かれ、アンは抵抗することなく了解し、七福飯店を去る。